1.印刷物における
環境配慮項目とマーク
用紙原料となる木材の伐採、インキに含まれる石油成分等から発生する揮発性有機化合物、製版、印刷工程で発生する有害廃液、各工程で発生するCO2…。あらゆるモノの製造工程がそうであるように、印刷物の製造においても環境負荷がかかります。ここでは、用紙、インキ、製造工程という3つの側面から、印刷物をつくるにあたって、どのように環境への配慮ができるかをご紹介します。
用紙
FSC®認証制度(森林認証制度)
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- [使用基準]
- FSC認証を取得している印刷会社で製造
環境、社会、経済の便益に適い、きちんと管理された森林から生産された林産物や、その他のリスクの低い林産物を使用した製品を目に見える形で消費者に届ける仕組みです。
NPOであるFSC(Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)が運営する国際的な制度です。
その森林が持続可能な管理を受けていることを証明する森林管理認証(FM認証:Forest Management)と、印刷、加工、流通工程でも承認用紙が非承認用紙と混ざり合うことなく管理されて製造された製品ということを証明する加工・流通過程管理の認証(Coc認証:Chain-of-Custody)からなります。用紙はFSC認証用紙を使用いたします。また、マークを掲載するにはFSC認証を取得している印刷会社で製造することが必要になります。
使用できるマーク例
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- [FSC®100%]
- FSC®認証森林からの原料を
100%使用している用紙。
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- [FSC®ミックス]
- FSC®認証森林からの原料の他にその規格に適合した管理木材や
リサイクル材をミックスして作られた用紙。
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- [FSC®リサイクル]
- FSCの規則に基づいた回収原材料を
100%使用している製品。
間伐材マーク
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- [運営主団体]
- 全国森林組合連合会
間伐材マーク事務局
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- [使用基準]
- 認定を受けた用紙銘柄を使用して印刷
森林の安全や樹木の成長のために間伐された木材を使用した商品(用紙)を表すものです。
印刷物にマークを入れることにより、製品・企業が健全な森林整備・育成に対して貢献していることを、
一般消費者に認知してもらうことができます。
使用できるマーク例
再生紙使用Rマーク
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- [運営主団体]
- 3R活動推進フォーラム
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- [使用基準]
- 申請・届出は不要ですが、表示に適合した
古紙パルプ配合率の用紙を使用すること
再生紙は原料に古紙が配合されて製造された用紙です。再生紙マーク(Rマーク)は古紙パルプがどれぐらい配合されているか数字(パーセンテージ)で表記することができます。申請・届出は不要ですが、適切な該当商品用紙を使うことが重要です。また本マークはPP貼りや箔押し等、他の素材を貼り合わせた複合素材の紙には使用できないので注意が必要です。
使用できるマーク例
グリーン購入法適合用紙
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- [運営主団体]
- 環境省
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- [使用基準]
- 『グリーン購入法』印刷用紙の
判断基準に準ずる
2000年に制定された国等の公的機関に対し環境物品等の調達推進等に関する法律「グリーン購入法」の基準に沿った用紙。各メーカーが対象商品を出しております。
・グリーン購入法適合用紙一覧(一般社団法人 日本印刷産業連合会作成):
https://www.jfpi.or.jp/files/user/pdf/greenprinting/green_purchasing_paper20211110.pdf
*グリーン購入法:
https://www.env.go.jp/content/000067259.pdf
使用できるマーク例
なし
インキ
Non-VOC UVエコインキ
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- [運営主団体]
- 一般社団法人日本WPA
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- [使用基準]
- 該当したインキを使用して印刷
インキ構成成分中には、有機溶剤を使用しておらず、かつVOCの発生量が1%以下のインキ。
これにより大気汚染の原因となる揮発性有機化合物(VOC)の発生が抑えられます。
※その他各メーカーや認定制度により様々なマークがあります。
ベジタブルインキマーク
(植物油インキマーク)
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- [運営主団体]
- 印刷インキ工業連合会
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- [使用基準]
- 使用許諾を受けた印刷会社で製造
元々インキの中に多く使用されていた石油系溶剤を、大豆油、亜麻仁油、桐油、ヤシ油、パーム油等の植物油来の油や、それを主体とした廃食油をリサイクルした溶剤に置き換えて作られたインキ。ただし完全に石油系溶剤がなくなったわけではなく、通常の平版オフセット印刷ではインキ中の植物油配合20%以上が基準となる。現在ではオフセットインキのほとんどが植物油インキ対応製品です。印刷インキ工業連合会が管理、運営。同連合会員企業が製造、販売した植物油インキを使用、また使用許諾を得た印刷会社での製造で使用することが可能です。
バイオマスマーク
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- [運営主団体]
- 一般社団法人日本有機資源協会
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- [使用基準]
- バイオマスマーク認定のインキを使用・また使用契約をした印刷会社で製造。
バイオマスマークとは一般社団法人日本有機資源協会の審査基準で認定された、植物油等の生物性由来の資源(バイオマス)を成分としながら、その品質および安全性が法規、基準、規格に適合した環境マークです。バイオマスインキとは植物はその成長工程で大気中のCO2を吸収するため、それを成分として作られた商品は、燃やしてもCO2の増減に影響を与えないというカーボンニュートラル的考えに基づいた環境循環型のインキです。
使用できるマーク例
ライスインキ
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- [運営主団体]
- 株式会社サンエー印刷/
ライスインキ・コンソーシアム
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- [使用基準]
- ライスインキを使用して印刷されていること
植物油成分の一部を米ぬか油を原料として作られたバイオマス植物油インキ。以前の大豆油インキは北米から大豆油を運ぶため輸送マイレージ(CO2排出量)が大きく、また食物を工業製品化するという懸念がありました。しかしライスインキは国産の米ぬかから精油されるため輸送マイレージも低く地産地消にも合致するすぐれた資材です。
製造工程
グリーンプリンティング認定制度
(GP認定制度)
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- [運営主団体]
- 一般社団法人 日本印刷産業連合会
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- [使用基準]
- GP工場認定を取得している印刷会社で製造
印刷業界の環境保全活動を推進するため、印刷工場と印刷製品の総合的な環境配慮をすすめる制度。日本印刷産業連合会が2006年に創設しました。GP認定制度は環境配慮された印刷工場を認定する「GP工場認定制度」、印刷工場が使用する資機材を認定する「GP資機材認定制度」、認定工場が製造した印刷製品にGPマーク(環境ラベル)を表示できる「GP製品認定制度」の三つで成り立っています。いずれもSDGsの目標の実現に寄与するものです。
製造工程の環境配慮内容を制度基準に基づき「ワンスター」「ツースター」「スリースター」のマークで表すことができます。
使用できるマーク例
★の数が多いほど環境配慮度合いが高くなります。
水なし印刷(バタフライマーク)
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- [運営主団体]
- 一般社団法人日本WPA
(日本水なし印刷協会)
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- [使用基準]
- 日本WPAの会員の印刷会社で制作
刷版時・印刷時に有害な廃液排出の原因となる、アルカリ性現像液・湿し水・IPAを使わない印刷方式です。
またこれにより、VOC排出削減にも効果があります。日本WPAに加入するとともに、水なし印刷を採用した印刷物に掲載が可能です。
使用できるマーク例
日本WPA会員が製作した印刷物に、カーボンオフセットを採用して、CO₂の排出量を実質ゼロにした「カーボンニュートラル印刷物」に掲載可能です。
この例では、印刷物製作時に原材料調達・製造・流通・廃棄・リサイクルの各工程で排出するCO₂量の合計が、「印刷物1部当たり123g排出し、同量のJ-クレジットでカーボンオフセットを実施し、CO₂排出量を実質ゼロにした印刷物」であることを示しています。